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生と死の彼方に

プラブパーダの御本をもう一冊訳していくことにしました。よろしかったらお付き合いください。英語では「Beyond Birth and Death」という題の小冊子です。 「*」マークのところは訳注です。http://www.krishnamedia.org/e-books/Beyond_Birth_And_Death.pdfに原文の全文が紹介されています。
*Beyondは、ある線や枠を超えた向こうに、という意味の言葉です。

前書き

「死後の生命はあるでしょうか」
魂が死後に辿る素晴らしい旅路について、インドで最も名高いヴェーダの権威が驚くべき証拠を紹介します。魂がどのように体から体へ移るのか、そして、至高の地へ至ることでこの生と死の循環を止めるにはどうすればいいのか、尊師プラブパーダ貌下が教えてくださいます。

*His Divine Grace A.C. Bhaktivedanta Swami Prabhupadaというのは、お名前というより称号です。こういう称号って、どう訳せばいいのでしょう。スワミは「尊師」かな。His Divine Grace(ヒズ・ディヴァイン・グレース)は「閣下」とか「陛下」に当たり、高位の聖職者を呼ぶときの尊称です。貌下、というのが適当でしょうか。なお、プラブパーダというのは「王の座」という意味だそうで、バクティヨガを極めた人に与えられる最高の称号だそうです。インドの人はお互いをプラブって呼んでますね。女性だとマタジ。

第一章
(第1段落)
We Are Not These Bodies
「私たちはこの体ではありません」
(サンスクリット引用)
"O descendant of Bharata, he who dwells in the body is eternal and can never be slain.
「おお、バーラタの子孫よ、体の中に住む者は永遠であり、滅びることがありません。
*descendant(ディセンダント)は、子孫とか末裔という意味です。普通はそれなりに由緒のある祖先がいる場合に使います。類義語にscion(シオン)があり、これもやっぱり名家の御曹司などを指すのに使います。to dwell(ドウェル)は動詞で、住む、という意味です。やや文語的な表現です。to liveと似てますね。普通の会話ではto liveを使います。eternal(エターナル)は永遠という意味の形容詞です。slain(スレイン)はto slay(スレイ)が受動態になった形で、もとは「殺す」という意味です。

Therefore you need not grieve for any creature." (Bhagavad-gita 2.30)
したがって、何者のためにも嘆き悲しむ必要はありません。」(バガヴァッド・ギーター2.30)
*to grieve(グリーブ)は嘆き悲しむという意味の動詞です。creature(クリーチャー)は生き物という意味です。

The very first step in self-realization is realizing one's identity as separate from the body.
自己認識のための最初の一歩は、自分が体とは異なる存在であることを自覚することです。
*realization(リアライゼーション)はto realizeという動詞の名詞形です。何事かを「気づく、認識する、理解する」というような意味です。identityは、アイデンティティーというカタカナで使われることもありますね。今流行りの個人情報などはこれに当たります。「自分は誰であるか」ということです。separate(セパレート)は、離れている状態を表します。カタカナで聞くと、「あー。知ってる」と思うものもあるでしょう。

"I am not this body but am spirit soul" is an essential realization for anyone who wants to transcend death and enter into the spiritual world beyond.
「私はこの体ではなく、霊魂である」というのは、死を超越してその彼方にある霊的な世界に入ることを望む者が必ず認識しなければならない事柄です。
*spirit(スピリット)というのは、最近よく聞く「スピリチュアル」という言葉の基になる名詞で、霊のことを指します。霊と言えば幽霊、お化け、と思うかもしれませんが、そうではなく、体が死んでも生き続ける私たちの本来の姿を指します。soul(ソウル)というのもほぼ同義の言葉で、魂のことです。spirit soulは同じ意味の言葉を単に2回繰り返したもので、日本語の霊魂と全く同じです。essential(エッセンシャル)は、必須の、絶対に必要な、という意味の形容詞です。

It is not simply a matter of saying "I am not this body," but of actually realizing it.
これは、単に「私はこの体ではない」と口にすればいいというものではなく、実際に自覚しなければなりません。
*matterは事柄という程度の意味です。

This is not as simple as it may seem at first.
一見簡単そうですが、これは案外難しいものなのです。

Although we are not these bodies but are pure consciousness, somehow or other we have become encased within the bodily dress.
私たちはこの体ではなく純粋な意識であるのですが、どうしたわけか体という衣服の中に閉じ込められてしまいました。
*consciousness(コンシャスネス)は意識を指します。somehow or otherは「どういうわけか」という慣用句で、somehow(サムハウ)だけでも同じ意味です。howは「ハウツー物」という言葉もあるように方法や事情を表すので、「ある事情によってか、はたまた別の理由によるものか」というような表現です。to encase(エンケース)という動詞は、en-caseという二つの部分から成ります。ケースは入れ物ですね。エン何とか、というのは、何かに入れる、とか、そういう意味で使われます。エン・パワーする(力付ける)、とか、エン・リッチする(栄養を添加する)、とか、そういう動詞がいろいろあります。

If we actually want the happiness and independence that transcend death, we have to establish ourselves and remain in our constitutional position as pure consciousness.
本当に死を超越した幸せと独立を望むのであれば、私たちは自己を確立して純粋な意識という本来の立場を固守する必要があります。
*to establish(エスタブリッシュ)は、よくTシャツなんかで見かけますね。「established in 1857」とか、無意味な数字がかっこよさそうに書いてあったりします。これは、しっかり基盤を築いて立ち上げる、確立する、という意味の言葉で、会社だと「設立する」に当たります。to remain(リメイン)は留まるという意味です。constitutionalはconstitution(コンスティテューション)の形容詞です。コンスティテューションって何かというと、憲法のことなのです。第9条をどうするこうする、というあれです。一番基本の、一番大切な、絶対に固守すべき、変えてはならない理念、というのを法律にしたのが憲法のはずですが、魂にも憲法みたいな絶対不変の本来的な性質があります。人間の作る憲法と違って、議論の余地はありません。

(第2段落)
Living in the bodily conception, our idea of happiness is like that of a man in delirium.
体という概念の中で生きている私たちが考える幸せというのは、狂乱状態の人が考える幸せのようなものです。
*delirium(ディリリアム)というのは意識が混濁した状態を指します。正常な判断ができない状態ですね。次のdeliriousは形容詞です。

Some philosophers claim that this delirious condition of bodily identification should be cured by abstaining from all action.
哲学者によっては、体と自分だと認識するこのような狂乱状態はあらゆる活動を避けることによって治癒できる、と主張する者もあります。
*philosopher(フィロソファー)は哲学者です。to claim(クレーム)は何かを主張すること。カタカナだと難癖をつける、苦情を言う、という意味で使われることが多いようですが、それだけではないのです。to cureは治療して治すという意味です。To abstainという動詞は、慎む、とか、控える、とかいう意味です。

Because these material activities have been a source of distress for us, they claim that we should actually stop these activities.
物質的な活動は私たちにとって苦労の源であるため、そうした活動を実際に停止すべきだというのです。
*material(マテリアル)は物質的な状態を表します。source(ソース)は源という意味です。distress(ディストレス)は、おなじみストレスと同じ意味ですが、やや文語的です。

Their culmination of perfection is in a kind of Buddhistic nirvana, in which no activities are performed.
彼らの言う至高の完全な状態とは、仏教徒の言う涅槃(ニルヴァーナ)のようなものです。そこではいかなる活動もなされません。
*culmination(カルミネーション)とは最高点のことです。名詞のperfection(パーフェクション)は、形容詞のパーフェクトのほうが馴染みが深いでしょう。to performe(パフォーム)は、何らかの行動をする、という意味です。派手なパフォーマンスをやってのける、というときだけに使う言葉ではありません。

Buddha maintained that due to a combination of material elements, this body has come into existence, and that somehow or other if these material elements are separated or dismantled, the cause of suffering is removed.
仏陀は、物質要素の組み合わせによって体は発生し、何らかの原因でこれらの物質要素が分離したり分解したりすれば苦しみの原因は取り除かれる、と主張しました。
*To maintain(メインテイン)という動詞は、普通は「維持する」という意味が多いのですが、何かの論点を主張する、という意味もあります。element(エレメント)は何かを構成する小さな要素のことを指します。existence(イグジスタンス)はto exist(イグジスト)の名詞形で、存在することを表します。To dismantle(ディスマントル)は、取り壊す、とか、分解する、とかいう意味です。「デ」、「ディ」とか「ディス」で始まる言葉は、何らかの意味で否定的な事柄を指す場合が多いです。日本語では「非、否、無、反」などに当たるでしょうか。cause(コーズ)は原因、to sufferは苦しむ、to removeは取り除く、という意味です。

If the tax collectors give us too much difficulty because we happen to possess a large house, one simple solution is to destroy the house.
たとえば、私たちが大きな家を所有しており、そのため多額の税金を課されて苦しんでいるとしましょう。一つの簡単な解決方法は家を壊してしまうことです。 
*tax collector(タックス・コレクター)は税金を集める人。to possess(ポゼス)は所有するという意味です。solution(ソルーション)は解決策、to destroy(デストロイ)は破壊するという意味です。

However, Bhagavad-gita indicates that this material body is not all in all.
しかしバガヴァッド・ギーターは、この物質の体は何よりも大切なものというわけではない、と記しています。
*to indicate(インディケート)は、何かを指摘するとか明らかにするとかいう意味。プリンターなどの機械類には状態を示すために赤とか緑に光る小さなライトが付いてたりしますが、ああいうのをインディケーターと言います。All in allは慣用句で、何よりも大切なもの、という意味です。

Beyond this combination of material elements, there is spirit, and the symptom of that spirit is consciousness.
物質要素が組み合わさってできているこの体の奥には霊があり、その霊の特性は意識です。
*symptom(シンプトム)というと病気の症状を表すのに使われることが多いですが、この場合は霊が持つ特定の性格のことを指します。


(第3段落)
Consciousness cannot be denied.
意識を否定することはできません。
A body without consciousness is a dead body.
意識のない体は死体です。
As soon as consciousness is removed from the body, the mouth will not speak, the eye will not see, nor the ears hear.
体から意識がなくなると、ただちに口は話さなくなり、目は見なくなり、耳は聞くことをしなくなります。
A child can understand that.
このことは子供でさえ理解できます。
It is a fact that consciousness is absolutely necessary for the animation of the body.
体を動かすためには絶対に意識が必要であるというのは事実なのです。
What is this consciousness?
この意識というのは何でしょうか。
Just as heat or smoke are symptoms of fire, so consciousness is the symptom of the soul.
熱と煙が火の特性であるように、意識は魂の特性です。
The energy of the soul, or self, is produced in the shape of consciousness.
魂、すなわち自己そのもののエネルギーは意識という形に作られます。
Indeed, consciousness proves that the soul is present.
実に、意識は魂の実在を証明するものであるのです。
This is not only the philosophy of Bhagavad-gita but the conclusion of all Vedic literature.
これはバガヴァッド・ギーターの哲学であるに留まらず、すべてのヴェーダ文献の結論です。
by ammolitering4 | 2008-03-07 02:55 | 「生と死の彼方に」


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